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海外・アジアで働く人々の就職体験談!連載企画『アジアで働く』

上海で働く:家田 昇悟さん(ビジネス開発)

海外就職体験談 2019-05-06




転職も起業も、すべては「中国」に対する興味。わかるようでわからない、それが中国の魅力。

家田昇悟さん 27歳



【プロフィール】1991年生まれ。在学中から中国のインターネットの動向を追い続け、SNSやブログで情報を発信。帰国後、新卒でメルカリに入社。PMとして日本でのアプリの企画などに従事後、中国での調査活動を経て、メルペイのマーケティング兼中国インターネット研究所所長を務める。2019年より上海のYorenにてビジネス開発シニアマネージャーに就任。また、個人で中国のオンラインビジネスや小売業界におけるコンサルティングも行う。


「日本を出て、海外で働く人ってどんな人だろう?」
筆者の私は結婚がきっかけで、上海で生活することになりました。このコーナーでは、そんな海外生活初心者の私が、自分の意思で海外でのキャリアを創る方に、海外で働くきっかけ、またその魅力をお伺いします。



   中国のオンラインビジネスや小売業界事情に詳しい専門家として、27歳にして多くのメディア記事の執筆や、講演活動を行う家田昇悟さん。一体どんなすごい方なのだろうと緊張していましたが、いざお会いしてみると、意外にも穏やかで素朴な雰囲気に、つい和んでしまいました。今回は、「興味があるから」中国にいるという、家田さんのお話を聞いてみたいと思います。


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「三国志」で中国の歴史の奥深さに魅了される。好きなことが、いつしか人生の軸になっていく。

   中国に興味を持ったきっかけは「三国志」です。小学生の時に図書館で、横山光輝さんの漫画を読みました。当時は、剣を持って戦うのがカッコイイという面白さでしたね。壮大な中国の歴史の面白さに目覚めた私は、日本の大学選びの際にも、ちょうど中国が日本のGDPを抜いた年だったことと、三国志ファンだったことを理由に、中国語学科に進学することを決めました。大学生になってからは、全く別の視点から歴史を捉えた「秘本三国志(著:陳舜臣)」に出会います。別の視点というのは、例えば諸葛亮孔明という劉備の参謀と、司馬仲達という曹操側の参謀、本来の話では敵として戦う2人がいます。しかし陳舜臣の本だと実は2人は裏で組んでいたということが記されています。物事を別の視点から見ると、一つの歴史でも全く違う解釈ができるのだと、当時の自分に大きな衝撃を与えてくれました。

   その後、大学の提携校だった上海の復旦大学に1年間留学しました。留学を終えても、もう少し中国で生活したいという気持ちがあり、思い切って1年休学して上海でインターンをすることに。インターン先の日本酒メーカーでは、お酒のネット販売に携わりました。そのプロジェクトの中で中国のインターネット事情を調べていくうちに、日本にはないスピード感で発展していくダイナミックな市場に魅了されていったのです。しかしその頃、日本において中国のネットサービス市場やスタートアップに関する情報がほとんどありませんでした。そこで自分のように興味を持っている人もいるはずだと思い、ブログやSNSを使って自ら情報発信を始めました。その積み重ねが、ありがたいことに今のお仕事につながっていますが、もともとは自分の興味で続けてきたことですね。



「なぜ、中国は○○なのか?」中国での生活を通じて、その問いへの答えを探す。

   中国に来たのは今回で4回目、通算で3年近くいます。4か月ほど前に上海に来て、現地企業で働き、会社員として過ごしています。帰宅後や週末に中国のモバイルペイメントや小売りの新しい事情について講演をしたり、記事を書いたりしていますね。

   正直なところ、日本でも中国でも同じような生活をしている気がしています。私にとって、中国での生活は日本の生活の延長線上にある感じですかね。中国に来て、日本では経験できないような経験を若いうちからできるとか、そういったことに刺激を感じる訳でもないですし、毎年大きな変化を見せる上海の勢いに触れていたいという訳でもないです。「中国は何故こうなのだろう」という興味、そのことを中国生活を通じて考えてみたい、それに尽きると思います。なので、中国に来て人生が変わったなどという大げさなことを言うつもりはなく、日本にいる時とあまり生活自体は変わっていません。


   今、自分の頭の中を100とすると、まず「36Kr(https://36kr.jp/)」という中国のスタートアップメディアの記事から得る考察を10%、上海の街を歩いていて気になることを10%、中国の新しいアプリやサービスの研究を30%の時間を使って考えています。もともとアプリの企画をやっていたので、アプリをずっと眺めているだけでも楽しくて。新しいUIやサービスが出てくると、その背景を考えます。例えば最近だと、「美団(飲食店や美容室などのプラットフォームアプリ)」で、各店舗が会員カードを発行できる機能が始まりました。月額いくら払うとクーポンがもらえるというものですね。その発見をTwitterにあげたり、似たようなサービスはないかと探したりします。これは仕事でもあるのですが、単純に面白くてやっています。



   残りの50%は、中国に関する自由研究です。直近の考察テーマは、「何故中国人は並ばずに横入りするのか」。例えば電車待ちの時、日本人はきっちり並びますよね。中国人は地域にもよりますが、まだ並ばないことの方が多い。色々と調べた結果、思考体系の違いによるものという説が有力だと思っています。日本人は「べき論」で物事を考えがちで、並ぶべきだ、という理屈やルールがベースになっています。一方中国人は「量」で思考が組み立てられます。現実的な影響の大小が判断基準になり、具体的には、「割り込まれることで、自分が切符を買う時間がどれだけ遅れるか」と思考します。詳しくは『スッキリ 中国論 スジの日本、量の中国(著:田中信彦)』を読んでみてください。このように身近な疑問を持っては、本を読んでネットで調べて、答えを見つけるということをやっています。

頭の中は、ほとんど中国に関することですね(笑)。何故、中国のことがそこまで好きなのかと聞かれることも多いのですが、単純に興味の対象なので、うまく答えられません。


上海での一枚。中国では、北京、深セン、成都、広州、南京、香港などに行きましたが、同じ国でも言葉や文化が違って面白いです。



性悪説がベースになる中国の考え方。それが嫌なところでもあり、好きなところでもある。

   私は「中国」に興味がありますが、「好き」という表現は少し違うと思っています。個人的に嫌だなと思うことももちろんありますよ。一つは、多くが性悪説で動いているところ。中国は基本的に、隣にいる人が信用できないという前提で動いていることが多いと感じます。例えば、アリババ傘下の業務用アプリ「釘釘(ディンディン)」のカレンダーは、本人以外がカレンダーを編集できません。Googleカレンダーであれば、編集権限を調整すれば本人以外でも編集できますが、「釘釘(ディンディン)」にその編集権限の機能はありません。それって誰かに勝手に予定をずらされたり、消される恐れがあるという考えが根底にあるはずなんですよね。同じ社内の社員も信用できないのかと驚きました。ただ機能開発が追いついていないだけかも知れませんが(笑)。

   でも逆に、お互いが「信用できない」がベースの環境だからこそ、周囲の目をいちいち気にしなくていいという良さもあると思います。人からどう思われるかを細かく考えるのが嫌いな人にとっては中国は住みやすいでしょう。中国に住む日本人からはよく聞く話ですし、実際に私もそういう面では生きやすい国だと思っています。

   ちなみに、「中国人」が他人を全く信用しないというわけではなく、ものの考え方のベースに性悪説はあっても、こちらから仲良くなろうと近づけば、可愛がってもらえることが多いです。印象に残っているのは北京で出会った出稼ぎ労働者のおじさん。レストランで初めて会ってたまたま仲良くなり、彼らが寝泊まりする地下室に連れて行ってもらったことがあります。内心は殺されるのではないかと思いながらついていきました(笑)。そこで飲んだぬるいビールが原因かは分かりませんが、気持ち悪くなって吐いたというディープな思い出ですね。


北京に旅行していた頃の一枚。同年代の中国人と、狭い部屋で飲み明かすこともありました。日本人とあまり変わらない光景ではないでしょうか。



栄光の時代から100年日の目を見ず、再び蘇った国。この大国のエネルギーを説明できる何かを見つけたい。

   大学の時から自分の興味は一貫して中国でした。世界の大国であった「中国」は清の末期にイギリスに負けて、それから約100年屈辱の時代を味わい、そしてまた、世界第2位の経済大国になりました。特にインターネットの分野ではアメリカを抜かすとも感じています。
私はこの一連の歴史をきれいに説明できるものを見つけたい、と思っています。中国で働くのは、その答えのヒントを見つけるためです。中国人がどういう性格で、どういう働き方をして、どういう商習慣を持っていて、ということを今実際に一緒に働きながら学んでいるところです。将来的に起業も考えていますが、中国人を雇うという立場で見えてくるものがあると思っています。私の起業の目的は金銭欲や独立欲でもなく、おそらく特殊だと思いますね。

   この大きな問いの答えは一生わからないかもしれませんが、死ぬまで探し続けたいですね。本をたくさん読んで、頭の中で空想して仮説をたてて、自分で足を動かしてそれを検証していく。そうして謎を解くというのが自分のモチベーションです。
実は最近だと、アメリカやイギリスに住みたいと思い始めています。これまで6年間、日本と中国との比較をしてきました。でも実は日本が特殊で、中国とアメリカに類似点があるんじゃないかという考えを持っていて。そんなことを歴史上の3大国を渡って考えてみたいです。



中国の進んでいる分野を見るために、ビジネスマンなら一度来てみるべき!

   日本は遅れているので、ビジネスマンなら一度は中国を見に来た方が良いですよ!と、煽ることを言うこともできますが、実際は日本の方が進んでいることはたくさんあります(笑)。ただデジタルの分野においては、中国の技術発展スピード、普及スピードは圧倒的です。日本国内で中国のデジタル領域への注目度は上がってきていると思いますが、ネットの記事を読むだけでは限界があります。例えば、中国は電子決済が普及しているという情報を記事で読むのと、実際に物乞いのおじいさんまでもがQRコードをかざしてくる姿を見るのとでは、感じるものも全く違うと思います。そして、中国はあまりにも広大で、「中国はこうだ」と一概に言えないため、正確に説明するのは本当に難しいのです。それがまた面白いのですが。興味があれば、一度自分の目で見て感じることが大事ではないでしょうか。一つの物事でも、視点が変われば、全く違う解釈ができるはずですから。



●家田さんからのメッセージ
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中国に住んでいると、日本における「中国・中国人は○○だ」という言論がいかに一部に偏ったものなのかを感じることがあります。その発言者の肩書きや知名度を信用し、理解されることに何となく違和感を持っていました。その点、自身の目で見て、体感して、自分の目線でフラットに情報を発信していく家田さんは稀な存在だと思います。
自己成長を求めるわけでもなく、「疑問への探求心」から生活する環境すらも変えていける家田さんの生き方は、これからの時代、理想とされる形のひとつではないでしょうか。





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