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海外・アジアで働く人々の就職体験談!連載企画『アジアで働く』

上海で働く 宇山紡さん(イラストレーター)

海外就職体験談 2023-02-24



上海の広告代理店で、
白熱する中国IPビジネスを経験。
その後イラストレーターとして独立!




イラストレーター
宇山紡さん


上海在住のイラストレーター。高校では中国語コースを専攻し、武蔵美術大学デザイン情報学科に進学。大学卒業後は映像制作会社でADやイラストレーターとして働いた。2016年、上海の広告代理店に入社。現在は個人事務所「宇山紡芸術設計諮詢(上海)有限公司」を立ち上げて活動している。

宇山さんはイラストレーターとしての活動のみならず、日本人向けのシティウォークを開催したり、トークイベントに登壇するなど幅広い活動を行っている。どうして中国でクリエイターとして活動するのか? その理由と面白さを伺った。


マンガで憧れた中華イメージ。初中国で打ち砕かれるもさらに夢中に

10代の頃は『ふしぎ遊戯』や『らんま1/2』といった中華デザインの要素があるマンガに夢中で、中国に憧れを抱いていました。振り返ってみると、マンガで描かれている「中華デザイン」は、日本で作られた「中華風」なんですけど(笑)。

それに気づいたのは、高校入学前に中国人の幼馴染に誘われて行った上海旅行の時。実際に見る上海はものすごく雑多な場所で、空港に降り立つといきなりテレフォンカードを売りつけられたりもしました。それまでの中国イメージは打ち砕かれましたね(笑)。でも、なんだかそれが面白いと思いました。

ちょっと話はズレますが、作家の芥川龍之介も初めて来た中国で、私と同じような印象を受けたといいます。彼らの時代は漢詩などで描かれる美しい中国に憧れていたそうですが、実際に来てみるとものすごくカオスで“ヤバい”みたいな(笑)。

上海旅行後は中国語コースのある高校へ進学。高校3年間は中国語の勉強に打ち込みました。その後はクリエイティブな道へ進もうと美大へ進学したんです。

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はじめての上海旅行時の観光チケット



働き始めたのは上海のローカル企業。盛り上がるIPビジネスの現場に身を置いた

日本では、歴史番組などを製作する映像制作会社で働いていました。はじめはADとして美術製作や衣装調達とか、なんでもやっていましたね。次第に私がイラストを描けるということで、番組内で使用する絵を描くことが増えていきました。ときには吉田松陰が浜辺を走る絵を描いたり(笑)。「こういう世界があるんだよ」って、人に伝えることにずっと憧れていたので、歴史を掘り起こして新しいストーリーで伝えるっていうことが面白かった。イラストを活かす仕事が増えていったことで、新卒から2年後には思い切ってイラストレーターとして独立することにしました。

そこからなぜ上海に来ることになったのかですが、上海で働き始めたのは2016年。先ほど話した幼馴染に誘われて、今度は彼女のお父さんが経営する広告代理店で働くことになりました。面白い誘いでしたし、もともとフリーだったので、断る理由もありませんでした。
そこは全員が上海人の超ローカル会社。私はIPビジネスの部署に所属し、会社オリジナルのキャラクターを企業に売り込む仕事を始めました。キャラクタービジネスの世界は、中国に来て初めて関わりましたが、とても面白かったですね。

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©宇山紡/プロフィールをイラスト図解!



近年の中国のキャラクタービジネスの盛り上がりってスゴイんですよ。北京オリンピックの公式キャラクター「ビン・ドゥンドゥン」が人気になったことも象徴的でしたよね。中国のIPビジネスって、2010年代後半から一気に盛り上がってきたと言われています。ただ、中国の特徴として、最初からビジネス目的で生み出されることが多い。ですが、キャラクターが親しまれるためには、世界観やストーリーが不可欠ですよね。例えばピカチュウって、サトシと旅しているっていう物語があるからこそ、これほど親しまれるようになったと思うんです。
だから、以前所属していた広告代理店では、オリジナルキャラクターを補完する物語を作ったり、サブキャラクターを作って世界観を持たせるような仕事もしていました。急速に発展する中国のIPビジネスや広告の現場に身を置けたのは、とても良い経験だったと思います。事実、現在でもその経験はとても役に立っていますから。

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©宇山紡/日常を描いた「上海絵日記」。プロフィール画像にもある可愛い容器は、じつは痰壺。



個人クリエイターとして上海で独立。街の歴史を伝えるシティウォーク企画も行う

現在は5年間務めた広告代理店を退職し、個人会社を立ち上げています。書籍イラストを描いたり、テレビのレポーターの依頼を受けたり……。クライアントは日本と中国、両方です。また、前職での経験もあってか、最近は上海の日系企業や中国企業のキャラクター制作やキャラクター関連のお仕事も増えてきていて、嬉しい限りです。中国のクライアントからは「日本人だったらイラスト可愛いだろう」って期待していただくことも多いですね(笑)。
正直、中国で個人事業主として働くのは簡単ではありません。でも、個人だからこそ活動の幅を広げることができていると思います。

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2022年発行『超初級から話せる 中国語声出しレッスン』(株式会社アルク)ではイラストを担当した 



また、「白相大上海-Shanghai City Walk―」という街歩きイベントも企画しています。観光では行くことのないちょっとディープな、昔ながらの上海の街を歩いて、その歴史を伝える活動です。日本でやっていた映像制作の仕事とも少し通じるところがあるかもしれません。私自身、上海に来たばかりの頃って、この街のことが全然わからなかったんです。上海って一見すると高層ビル群ばかりが目につきますが、一本路地に入ると昔ながらの街並みが広がっている。 上海のことをもっと知りたいと思っていた時に、街歩きを企画する中国人の方に出会いました。しかもその方が日本語がしゃべれるらしいと! プライベートで日本人向けの街案内を頼んだところ、徐々に人が集まって、いまではのべ数百人のメンバーが参加しています。月に2回ほど、街歩きのイベントを企画していますよ。

ただ残念なことに、上海の再開発はものすごいスピードで行われていて、古い街並みはどんどん失われてしまっています。去年歩いた場所もほとんどなくなってしまいました。とても惜しいことですが、今あるうちに記憶にも記録にも残したいなと思っています。

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シティウォークでの一枚。大都市上海とはまた違った景色を知ることができる



日本の美大を目指す中国の学生たち。貪欲に学ぶ学生に、刺激を受ける

実は近年、中国人学生たちのなかで日本の美大に行きたいという人が増えているそうです。「高校生の3分の1は美術系に行きたい。なかでも日本の美大へ」なんていう話もあるくらい。中国の若い世代は、日本のマンガやアニメに大きな影響を受けていますし「無印」のようなブランドが中国に来てからは、日本のプロダクトデザインに興味を持つ学生たちも増えましたから。
日本は近いし費用も抑えられるので、留学先としてうってつけです。最近では、美術大学院の学生はほとんどが中国人留学生、なんてこともあるんですよ。でも、日本の美術大学の入試ってちょっと特殊。だから、日本語学校と協力して、美術受験についてサポートする仕事も行っています。私自身も美大受験を経験しているので、受験のノウハウを伝えたり、デッサンの仕方なんかも伝えたり。まあ、コンサルティングみたいなお仕事ですね。

中国人学生たちは学ぶことに貪欲です。「日本ってこうなんだよね!」ってびっくりするくらい詳しい学生も多い。そんな風に中国の学生たちが興味を持ってくれるのは嬉しいことです。中国アートが日本の文化を貪欲に吸収する様子に、私自身も大きな刺激を受けています。


上海移住

日本の美術大学を目指す中国人学生たちへ講演会の講師をすることも



地域に根付いて制作するのが自分のスタイル。解像度の高い上海を伝えたい

私はイラストレーターとして活動していますが、中国に来てからは制作方法がガラリと変わりました。日本では100%納得したうえで作品を提出していましたが、中国に来てからはスピード重視。とりあえず出して、ダメだったら直しちゃえ。スクラップ・アンド・ビルドって感じです(笑)。時間をかけないと文化は生まれませんが、この国では時間がものすごいスピードで過ぎていますから。

また、クリエイターとして上海の街に根付いて制作することを大切にしています。じつは、私、ものすごく古い家に住んでいるんですよ。備え付けの家具も古くて、ベッドなんて民国時代のもの。その家に住んだのは、安いからっていうのもありますが、なにより面白いことが起こりそうだったから。昔ながらのご近所づきあいも濃厚ですから。上海の解像度が上がるような気がしたんです。

中国在住のクリエイターさんたちは沢山いるけれど、上海のディープな部分に触れながら制作をしているのは、私オリジナルのカラーかなって。これからもこの土地に根付きながら、私らしく表現していければと思っています!


上海移住




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