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海外・アジアで働く人々の就職体験談!連載企画『アジアで働く』

上海で働く 福島智恵さん・日本語教師

海外就職体験談 2022-06-24



コロナ禍の影響を受けた外国語教育。
日本語教師として悩みながらも、
学生たちの学びをサポートする


イタリア留学中の一枚。海外で過ごした経験が日本語教師を志すきっかけに


日本語教師
福島 智恵さん

1993年、京都府生まれ。家族の仕事の都合で、幼少期から日本と上海、北京の3拠点での生活を経験する。日本での高校生活を経て、上海華東師範大学に進学。その後、同志社大学大学院「グローバル・スタディーズ研究科」に進んだ。イタリア・ミラノでの語学留学を経て、2019年に日本語教師の道へ。


コロナ禍によって、日本語を学ぶ多くの学生たちの留学計画がとん挫した。外国語を学ぶ意欲を維持するのが難しい状況のなかで、福島さんもどう学生たちをサポートするのかに頭を悩ませたそうだ。 幼少期から日中を行き来してきた福島さんは、どうして日本語教師を目指したのか? 日本語教育への想いを伺った。


***


3月末からの上海ロックダウンで、
   受験生たちへのフォローが課題に


3月末から始まった上海でのロックダウンは(5月末に解除)、中高生たちにも大きな影響を与えています。授業はオンラインになり、様々な対応に追われました。なかでも受験生たちにとっては、試験前のとても重要な時期。試験日が延期となるなかで、勉強と精神面のフォローが課題となっています。

私が勤める「上海市甘泉外国語中学」は、外国語教育に力を入れる中高一貫学校です。日本語を第一外国語とする学校として知られています。学生たちは「日本語、フランス語、スペイン語、英語、ドイツ語、韓国語、ロシア語」のうちから本人の希望に沿って2~3言語を学ぶことができます(※ロシア語と韓国語は第二外国語としてのみ選択可能)。例えば、日本語と英語を週5日勉強して、それにプラスしてロシア語を週1回学ぶ――といったスケジュールです。

そんなふうに、10代のうちから多言語に触れることは、生徒たちの可能性を広げてくれると感じています。例えば英語が苦手な子であっても、フランス語なら興味を持って取り組めることは十分ありえますから。複数の言語を知り、文化を知ることで、子どもたちの視野も広がるはずです。


日本語教師

中学生への授業風景。予備年生の小学6年生から中学2年生までは基礎文法や日常会話を学ぶ



日本文化に夢中な中国の学生たち。
   社会課題を伝えることも教師の役割

私は主に中学3年生と高校1年生の授業を担当しています。授業のいちばんの特徴は、私も生徒も日本語のみで話す点です。日本語学習がある程度のレベルに達したら、より実践的に語学習得を目指すんです。受験に向けて、作文添削やスピーチ指導などを日々行っていますよ。

学生たちはとても熱心に日本語を学んでいます。中国の若い世代は、日本のアニメや漫画、ドラマ、芸能人に夢中な子が多いので、そこから日本語に関心を抱くようです。そんな風に日本のものを好きになってくれることは、とても嬉しいことですよね。ただ、教師としては、日本のキラキラした側面だけではなく、社会が抱える課題も伝えることを大切にしています。

教え子のなかには日本へ留学に行き、就職する子も出てくるはずです。「就活問題」や「少子高齢化社会」など、社会課題をあらかじめ伝えておくことが、今後の彼らにとって重要だと思うんです。


日本語教師

コロナ禍前には実際に日本の姉妹校に行き語学交流を行っていた。現在はオンラインでの交流に力を入れている



大学進学で再び訪れた上海。
   知らなかった景色や文化に驚いた

私にとって中国は、幼少期から馴染みのある場所です。父の仕事の都合で、小学生から中学生にかけて、日本と上海、北京を行ったり来たりする生活をしていました。

高校3年間は日本で過ごしたのですが、大学進学時に改めて上海への留学することを決めました。日本は居心地のいい場所ですが、“海外”というチャレンジングな環境に行きたいと考えたんです。それに何より、中国のことをもっと知りたいと思うようになっていました。

そうして大学進学時に初めてひとりで上海に来たわけですが、留学してすぐ「私の知っている上海じゃない!」と驚きました。小中学生の頃は日本人学校に通い、日本人コミュニティの中で生活していたので、その時に見た世界とは大きく異なっていたんですよね。

なかでも、中国人の友人たちとのコミュニケーションには、戸惑うことがありました。中国の方は率直に意見を伝える方が多いです。慣れていないとストレートな意見に、グサッと傷ついてしまうことも……。ただ、良い面も率直に褒めてくれるし、活発に意見を交換することができます。結果として、お互いの考えを理解して、良い友人関係を築くことが可能です。

それに大学では、韓国やタイ、イタリアなど様々な国から来た学生たちとも交流することができました。多様な文化を持つ友人を持てたことは、私の考え方にも影響を与えたはずです。もともと大学卒業後は日本で働くつもりでしたが、さらに国際感覚を身に着けるために大学院に進学することにしました。その後、イタリア・ミラノへ語学留学もしています。

そのように学びを深めるなかで、いつしか「日本語教師」という仕事を意識するようになっていました。慣れ親しんだ中国、そして私の出身地である日本。両国の相互理解を深め、懸け橋になることができる仕事だと思ったんです。


日本語教師

学校での誕生日パーティー。クリスマスが誕生日である福島さんを生徒や同僚たちが祝ってくれた



お互いの国を知り、交流することが、
   日中相互の理解につながるはず

2019年に現職に就きましたが、この2~3年は悔しい思いをすることが多かったです。コロナ禍によって学生たちの留学が延期となり、進路を変更する子たちを見てきました。もちろん、中国の大学でも日本語や諸外国語を専門的に学ぶことは可能です。ただ、実際に現地に行って、異文化の生活を知り、現地の方たちと交流することは、なにごとにも代えがたい経験だと考えています。

私自身、上海、北京、イタリアで生活してみて、文化の違いに戸惑うことばかりでした。コミュニケーションの違いからストレスを感じたり、一時は留学したことを後悔しそうになったり……。それでも、少しでも言葉が通じたとか、相手の考え方や意図が理解できた、ひとりで買い物ができた、バスに乗れた――。そんな些細なことですら自分の成長を感じることができ、自信につながります。

海外に出てみて、後悔することもあるかもしれません。でも、それってやってみないとわからないものですよね。私は、一歩踏み出すことに価値があると思います。本当に向いていないなら帰ることだってできるのですから。

日本は今年から海外留学生の受け入れを再開しました。私が受け持つ学生でも、日本への留学を実現した子も出ています。とても嬉しい変化です。学生たちには様々なものを見て、感じて、自ら考える力をもってほしいです。それが、日中の相互理解につながると考えています。私自身もその一助になれたら嬉しいです。


日本語教師

同僚と上海で話題の書店巡り。同僚たちとの交流が上海でいちばんの楽しみ





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