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海外・アジアで働く人々の就職体験談!連載企画『アジアで働く』

タイで働く 後藤ゆりかさん(営業)

海外就職体験談 2021-11-25

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「仕事がつらいのは当然」「我慢するのが当たり前」。
そう思っていた私がタイで見つけた、
自由な生き方へのヒント




タイの人気キャラクターマムアンちゃんのグッズとともに



営業
後藤ゆりかさん

【プロフィール】1994年生まれ、愛知県出身。大学在学時から語学留学や海外旅行を多く経験し、卒業後は東京の専門商社に総合職として入社。1年間勤めたのち海外転職を決意する。タイでは3年間、営業として働いた。2021年秋、日本へ帰国することが決まった。


後藤ゆりかさんはふわりとした雰囲気の方で、言葉を丁寧に選びながら話すのが印象的だった。後藤さんはご自身のことを、日本にいたころは人の目を気にして、自分自身の意見を言うのが苦手なタイプだったという。それでも強い意志でタイにやって来て、タイで働くなかで自分自身の価値観や性格も変わっていったそうだ。日本とタイ、ふたつの国で働いた経験は、彼女にどのような影響を与えたのだろうか? タイで暮らした3年間について、率直に語っていただいた。


***


愛読していたフリーペーパーの会社で、
   好きを仕事にすることができた


じつは昨日、会社を退職したばかりなんです。帰国することに伴って退職することにはなりましたが、これまでで一番やりがいを感じて、自分自身が成長できた仕事でした。

フリーペーパーの制作会社で営業を担当していたんですが、タイではフリーペーパーが現地に住む日本人たちの重要な情報源になっているんです。飲食店をはじめとしたトレンド情報が掲載されていて、私もタイに来たばかりの時はそこから最新情報を入手していました。それに私自身、カフェやレストラン、ホテルなどをめぐることが趣味なので、自らも情報を発信していきたいと考えたんです。

当初は編集者志望だったんですが、未経験ということもあって営業職として採用していただきました。でも、様々なことにチャレンジできる環境で、特集記事の店舗選びや取材、ライティングまで経験しましたよ。趣味も仕事に活かすことができて、“好き”を仕事にできていることが嬉しかったですね。私が書いた記事を見て、お客さんが喜んでくれたり「よかったよ!」と声をかけてくれることもあって、そうしたひとつひとつがやりがいになっていたんだと思います。




取材で訪れたカフェ。タイのカフェは開放的な雰囲気でリラックスできるという



新卒で、夢見た商社に入社するも、
   配属されたのは経理部門で

タイに来たのは社会人2年目のときです。もともと海外に興味があって、大学時にはイギリスやアメリカ、セブ島に短期留学をしました。他にも、韓国、イタリア、フランス、タイ――多くの国を旅行したことがあります。海外に行ってみるとさらに興味が膨らんで、いつしか海外で働いてみたいと思うようになりました。

なので、新卒の時は海外出張や研修ができる専門商社に総合職として入社しました。でも、配属されたのは全く想像もしていなかった経理のポジション。海外出張や海外勤務に憧れて商社を志望したので、正直「どうして」って驚いてしましましたね。自分なりに前向きに取り組んでみたんですが、希望していた仕事とのイメージがかけ離れていたせいもあって、日に日にギャップが大きくなってしまって……。ちょうど1年経った頃、本当に好きなことをしたいと、辞める決心をしたんです。




コロナ禍前のパタヤ。鮮やかなネオンの下を多くの人々が行き交う



自分が言わなきゃだれも動かない。
   タイで働く環境が自分を変えてくれた

次の仕事では絶対に海外で働きたいと思っていたので、とにかくたくさんの海外転職サイトに登録しました。海外赴任ができる企業や現地採用企業。ベトナム、インド、タイ……国にもこだわらず応募しました。

このとき「絶対に海外で働こう!」と決めたことは、自分のターニングポイントになったと思います。なぜなら、タイで自分の“好き”を仕事に活かすことができて、自分自身が大きく成長することができたからです。いちばん変われたところは、人に意見を言えるようになったり、積極的に動けるようになったことです。私はもともと口下手で、自分の考えを伝えたり、人に指示するのがかなり苦手なタイプでした。

ですがタイの方と一緒に仕事をすると、自分自身から動かなければだれも相手にしてくれないし、だれも動いてくれません。そのせいで、仕事が上手くいかなかったり、スケジュールが間に合わない――なんてこともありました。このままではダメだと、自分も変わらなくちゃと思ったんです。そこからは、自分の意見を積極的に言うようになったし、具体的に指示を出すようになりました。日本とは違う環境で働くことで、徐々に自分も変わっていったんだと思います。

「〇〇人はこうだ」と断定するのはよくないとは思いますが……。やっぱり、国民性ってあるんだと思います。日本人は仕事を第一に考える方が多くて、タイ人は仕事をあくまで人生の一部としてとらえる傾向にあると思います。そこで双方の価値観がぶつかってしまうのかもしれません。相手の価値観を尊重して行動することは大切なことですが、想像以上に気力も体力もいることなんだと知りました。

でも、上手く関係性を作る方法は確かにあって、勤務先ではローカルの方と日本人とが協力しながら働けていました。社長のタイ滞在歴が長かったことも関係しているのかもしれません。ひとりひとりがお互いの意見を尊重して補うことができれば、意外と上手く回っていくものなんだと思います。




タイ南部にあるリゾート地ホアヒン県にて。名物の乗馬を体験した



ふたつの国の価値観を知ったことが、
   今後の支えに、きっとなるはず

タイでは今現在(2021年9月)、コロナ禍によって厳しい状況が続いています。街はロックダウン中で、レストランでは店内飲食ができません。フリーペーパーも飲食店やエステなどから広告をいただくことが多いので、やはり影響を受けてしまいますね。コロナ禍で最もつらいと感じるのは、これまでよくしていただいていた飲食店のオーナーさんたちが厳しい状況にあることです。早く状況が改善されてほしいですし、タイが再び賑わう日が待ち遠しいです。

一方で私自身、近々日本に帰国することが決まっています。タイにいたのは3年間――。本当に、たくさんのことがありました。苦労したこともたくさんあって、それだけ乗り越えたこともあります。結婚を機に日本に帰ることになっていますが、今後はキャリアアップを目指すというより、好きなことや興味のあることをするつもりです。私もタイの価値観に染まってしまったのかもしれませんね(笑)。

実は、飲食店巡りの趣味がこうじてSNSでも発信するようになったんです。そしたら次第と反応をいただけるようになって、実際にレビュー依頼をいただけるようになりました。こうした発信は日本に戻っても続けていきたいと考えています。

最近は働き方がどんどん多様化していて、会社に所属しなくてもできることが増えてきています。以前の私なら、仕事がつらいのは当然、我慢しないといけない、と考えたと思います。でも、日本とタイの二カ国で働いてみると、日本の働き方が絶対に正しいわけではないと思うようになりました。タイの考えが100%良いとか、日本の考えが絶対にダメだとか、そういうことが言いたいわけではありません。ただ、どちらの価値観も知っているのは、今後の人生で支えとなるはずです。

ひょっとすると10代の頃から海外に憧れがあったのは、自由な働き方や生き方を探していたからなのかもしれません。自由に生きるヒントを、私はタイで見つけたんだと思います。以前よりも肩の力を抜いて、生きているような気がします。




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