深セン・広州就職体験談:向井 智さん

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「体育の先生」から「防犯機器メーカーの設計者」へ。
チャレンジに寛容な海外で経験を積みながら、
自分の道を切り開いていく。

向井 智さん 32歳



【プロフィール】日本の体育大学を卒業後、中学校教諭を経験。その後、中国・長春の東北師範大学体育学院大学院に進学。そのまま中国に残り、広東西科姆電子安全有限公司(広東セコム)に営業職として入社。2年間深セン勤務ののち、現在は広州にて、設計部の主任として活躍中。


「日本を出て、海外で働く人ってどんな人だろう?」
筆者の私は結婚がきっかけで、上海で生活することになりました。このコーナーでは、そんな海外生活初心者の私が、自分の意思で海外でのキャリアを創る方に、海外で働くきっかけ、またその魅力をお伺いします。



   セキュリティ設備の日系大手、セコム株式会社の広東拠点にて設計部主任として働く向井さんは、日本での前職は中学校の体育教師だったそう。「大きなキャリアチェンジができるのが海外で働く面白さ」と語る、ご自身の経験に基づいた向井さんのお話には、海外就職を控える皆さんにとって気づきになるエッセンスが詰まっているのではないでしょうか。


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大学卒業後も大好きなスポーツの世界で生きていくつもりが
   卒業間近に、中国行きのチャンスが舞い込む。


   子供の頃から陸上競技をやっていて、将来もスポーツに関わりたいと思っていました。体育大学へ進学し、フィットネスクラブの運営に興味を持っていたので、卒業後はその道に進むつもりでした。 しかし大学卒業前になって、お世話になった教授から「中国に行ってみないか」と突然連絡があったのです。国が費用を負担する、中国への交換留学プログラムの候補者に自分が選ばれたということでした。きっかけは、「日中のフィットネス事情比較」をテーマにした私の卒業論文でした。私は中国に特別な興味があったわけではなく、日本と中国のフィットネス市場比較の研究があまり世になかったためテーマとして選んだだけでしたが、その論文のおかげで、考えてもいなかったチャンスが自分に回ってきたのです。面白そうだと思ったことと、費用の心配もなく海外に行けるまたとないチャンスだということで、中国の体育大学院に進学することを決めました。

   留学は9月からだったため、大学卒業から半年間は、たまたま声をかけていただいた縁で、中学校の保健体育の教師として働きました。ついこの間まで学生だった自分が、いきなり周囲からは「先生」と呼ばれるような、異色な環境を知れたことは今となっては貴重な経験だったと思っています。



中国語は習得したものの、中途半端な自分に気づき、
   もうしばらく中国で頑張ってみようと決心。

   大学院は中国の北方に位置する吉林省、マイナス20~30度にもなる寒い地域にあります。最初の1年は語学研修を受けました。中国語はもちろん、英語も話せなかったので、一番下のクラスにいても先生が何を言っているのかわかりませんでした。しかし必死に勉強を続け、最終的には教授の授業を聞き取り、かつ学生とも議論できるレベルまで到達しました。勉強を頑張りつつそれなりに楽しい学生生活を送っていましたが、日本人や韓国人の留学生と一緒に過ごすことも多く、卒業が間近に迫ったある日、「何だか、あまり中国人と一緒に過ごさなかったな」とふと思ったのです。中国で数年過ごした経験があるといっても、まだ知らないことがたくさんあるのではないかと。せっかく中国で頑張ってきたので、今この気持ちを抱えたまま帰国するよりは、中国人や中国というものをもっと知った上で日本に帰ろうと決めました。

   そうして中国で就職活動を始めるのですが、中国で外国人が新卒で就職することは難しく、当時(※)ビザの規制が比較的緩かった華南地域で仕事を探すことになりました。また、吉林省の寒さがとにかく辛かったため、南の暖かい地域で生活したいと思ったことも理由でした。最終的に現職のセコムに就職する決め手になったのは、「日本の会社と同じように働いてもらう」とはっきり上司が言っていたことですね。日本の働き方も、中国の働き方も学べるという環境が、社会人経験の少ない自分にとって魅力的に映りました。

※2014年頃。現在は職務経験が必要になる等、厳しくなっています。



営業、設計、部署立ち上げも全くの未経験から任せられる。
   チャレンジに寛容な環境が海外で働く醍醐味。


(写真)他部署の上司と。社内でのコミュニケーションはとても大事にしています。

   セコムでは、営業職として深センと広州市場を経験し、現在は工場など比較的大規模なセキュリティ設備の設計を担当するSI部の主任として勤務しています。最初は、体育教師の経験が半年あるだけで社会人として未熟でしたし、営業も設計も全くわからないところからのスタートでした。さらにSI部に関しては、その立ち上げから任せられました。日本と比較すると「未経験から仕事をスタートし、1年足らずで部署の主任」というとずいぶん早いと感じられるかもしれませんが、この中国の環境ではこれが特別なことだとはあまり思いません。例え経験が浅くても、貪欲に仕事に取り組む姿勢があれば、あいつに任せてみようかと思ってもらえるようで、私の場合は営業時代から設計のことに興味があり、自分で学んでいたのを上司が見てくれていたようです。

   日本の転職市場では、経験者でないと応募できないケースが多いと思いますが、一方海外では、未経験でもやる気があれば挑戦させてもらえるチャンスがあります。一つの職を極めることも素晴らしいですが、私は複数の職を経験することで得られる視点や考え方もあると思います。このチャレンジに寛容な環境というのが海外で働く醍醐味だと思っています。



郷に入っては郷に従え。外国人である私たちが、
   現地のやり方に合わせなければならない。

   仕事では、日系企業とは言え中国人社員がほとんどですし、中国語を使ってコミュニケーションしています。現地社員と一緒に仕事をする中で、思ったとおりに意図が伝わらず、失敗したことや苦労したこともたくさんありました。例えば、設備工事を担当する社員に、「この装置をドアの右につけてほしい」という指示をしても、工事後に確認してみると左についている、というようなことが少なくありません。しかし、社員によくよく聞いてみると、顧客にとってこちらの方が便利だろうと判断した結果の行動でした。彼らは「任されたからこそ、最善のサービスを自分なりに考えて工夫する」というビジネスの考え方があり、決して怠慢でそのようなことをしているわけではないのです。これは日本とのギャップですよね。それを理解してからは、なぜ顧客が右につけたいと希望しているのかという背景、考え方まで説明するようにしています。日系企業だからといって日本的な習慣に合わせて当たり前という考えは通用せず、むしろ外国人は私の方なので、現地のやり方をまずは受け入れるように心がけています。



深セン、広州。広東省の2大都市で生活してみて。

   私は深センと広州での勤務を経験していますが、この2つの都市は同じ広東省にありながらいろんな点で違いがあります。
ビジネス面で言うと、深センはエレクトロニクス関連の中小企業が、広州は自動車関連の大企業が多いです。広州では、伝統ある大手有名企業とお取引をさせてもらうことが多くありますが、深センでは大手以外にも様々な規模の企業が拠点を構えており、決裁者や経営者に会えることも多く、個人的にはビジネスをやる上では深センの方が面白かったなと思いますね。

   生活面で言うと、深センは気候が良く、空が青いのが最高です!休日の朝に、高層ビルの隙間からのぞく青空の下で飲茶を食べるのが好きでした。一方、広州は湿度が高くじめじめしています。しかし美味しい広東料理屋さんが多いこと、旧市街地という古い町並みがあることは広州ならではの魅力ですね。住んでいる人も、広東語を話す、昔から現地にいる方が多いです。深センだと、実はあまり中国らしさは感じられません。元々は漁村で、改革開放以降にできた新しい街なので歴史が浅いのです。現在は、日本でも有名なテンセントやファーウェイなど中国のIT企業が拠点を構える経済の街として発展していて、標準語を話す、外地から来た人や若い人が多い街です。地理的に近い2大都市ですが、近未来的で勢いのある深セン、映画で見るような伝統的な中国らしさもあるのが広州、それぞれの個性と魅力があります。

   個人的には働く場所はあまり重要でなく、どこで働くかより、そこで何をするかが大事だと思っているのですが、あえて言うのなら、若い方で将来的に世界を舞台に働きたい人は深センが面白いのではないかと思います。スタートアップ企業がとにかく多く、刺激を与えてくれる人に会えるチャンスがあるからです。視野を広げたい人には良い環境だと思いますね。


(写真)現地で仲良くなった、日本人や中国人の友人との一枚。同じ中国でも深セン・広州それぞれの地で出会う人にも個性があって面白いです。



自分の道は自分で切り開くしかない。
   これから海外で働こうと思う人は、
   その先の目標をもってチャレンジしてみては?

私が中国で働き始めて数年は、ぼんやりとした不安がずっとありました。新卒から日本で働いて着実に昇進していく友人を見て焦ることもありましたし、見えない将来にモヤモヤとしていました。でも今は、開き直っています。使い古された言葉ですが、「人生は自分で切り開くしかない」と。日本にいる友人のようにレールの上を着実に進んでいく人生も立派だと思いますが、先は不透明でも自分で道を創っていくという生き方も刺激的で面白いと思っています。

今は日本への帰国は考えていません。この世の中の移り変わりを見ていると、日本と中国の二国間に限らず、もっと視野を広げないといけないと考えています。どの国でも活きるような能力を身につけたいです。それは必ずしも現地に行かずとも、現職でも努力できることだと思っていて、最も重要な「バックボーンの違う人達への適応力、理解力」を鍛えていきたいです。

私の場合は、勢いで中国での就職に踏み切りましたが、長期的な目標を持ちながら海外に来ている人が結局は一番強いのかなと周囲を見ていて思いますね。これから海外に出たいという方は、その気持ちと勢いだけで飛び込むのは、後々辛くなるだろうし、何よりもったいないと思います。あらかじめ自分も計画できていたら最初から働き方も変わっていただろうなと、それが唯一後悔している部分です。せっかくなら「そこで何をしたいか、何を得たいか」という目標を立ててから、働く環境を選ぶといいのではないでしょうか。


(写真)広州では、休日にはお気に入りのカフェでのんびり過ごします。


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私は海外転職にはエイヤっと海を渡れる「勢い」が大事だと思っていましたが、向井さん曰く、海外生活の中で必ず出てくる迷いや不安に負けないために、長期的な目標が必要とのことでした。確かに、「海外で働く」ことが目標になり、いざ海外に渡航して目的を果たしてしまうと、すぐに帰国してしまったという方は少なくありません。目標は、仕事面でも、生活面のことでもいいと思います。海外転職を考えられている方は、「海外で働いて、その先に何を実現したいか」を、一度自分に問いかけてみてはいかがでしょうか。





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